ゲーム理論の「旅人のジレンマ」ってどういうものなの?

ゲーム理論ではいくつか有名な例が存在します。
囚人のジレンマなんかはその際たる例ですよね。
今回はややマイナーな旅人のジレンマについてご紹介します。

旅人のジレンマ

旅人のジレンマは以下のような状況を指します。

2人の旅人が海外旅行中に珍しい骨董品をそれぞれ一つずつ手に入れました。
それぞれの骨董品は外見上全く同じです。2人はこれを売りさばこうと骨董品店に行きました。
骨董品店主は2人とそれぞれ個別に面談し、提示する販売希望価格が2人とも同じならその価格で買い取り、もし価格が異なれば、低い価格Pを申し出た側からは価格P+Rで買い取り、高い価格を申し出た側からはP-Rで買い取ると言いました。
この骨董品が旅人にとっては何の価値もなく、Rが1より大きいとき、旅人は骨董品の販売価格をいくらにするとよいでしょう?

具体的な数値を入れた例

PとかRとか記号だとややこしいので、具体的な数値を入れて考えてみましょう。
仮に2人の旅人をAとBとし、それぞれの販売希望価格を

  • A: 12万円
  • B: 8万円

とします。

Rは店側が勝手に決める価格なので、ここではR=5万円とします。
このとき販売希望価格が低いのはBですからP=8万円です。
よって、受け取る金額は以下のようになります。

  • A: 8万円 – 5万円 = 3万円
  • B: 8万円 + 5万円 = 13万円

安い値段を言ったBさんはものすごく得をしてて、12万円という高い値段を提示したAさんは損してますね。

ゲーム理論的解釈

さて、この旅人のジレンマですがゲーム理論を適用させた場合に最適な解は、0円を提示するということになります。安く提示したBさんが得したわけですから、安ければ安いほど良い → 0円を提示、というわけです。

自分が旅人の片方だった場合に、もう片方が何円を提示するのかが分からなかったら、自分が高い方の価格を提示してしまう恐れがあります。自分が高い方の値段を言ってしまうと、今回の例だと相手より受け取る金額が10万円(13万円 – 3万円)も少なくなってしまいます。

0円を提示すれば、タダより低い金額はありませんから、必ず自分が提示した価格がPになります。

となると自動的に、自分はP+R、ここでは0+RなのでRだけお金をもらえるか、あるいは相手も0円を提示して2人とも何も受け取らないか、の2つに1つしかありません。

元々この骨董品は自分には何の価値もないわけですから、Rをもらえる可能性があるだけ得であると考えるのが論理的な考えということです。


みなさんは旅人のジレンマについてどう思われるでしょうか?

論理的には0円を提示するのがいいとわかっていても、実際はゲットした壺を0円で売るのに躊躇し、骨董品屋に0円を提示することに納得できない方もいらっしゃるかと思います。
論理的に得られる解が、直感とそぐわないことはよくあります。
自分の直感をたまに疑ってみるのもいいかもしれません。

90秒で分かるゲーム理論のナッシュ均衡って何?

コメント

  1. R=3万円、ではなくて、R=5万円 では…。

    • ShareWis Press より:

      ご指摘ありがとうございます!
      また、誤り申し訳ございません。R=5万円が正しいです!修正いたしましたm(_ _)m