両親に初詣やお参りの習慣がなかったり、祖父母と離れて暮らしていて昔の人から教わる機会がなかったりと、実は神社の正しい参拝の仕方を知らない人が多い昨今。
「いや別に神社とか行かないし、知らなくても困ることないっしょ」とお思いかもしれません。
しかし、もし会社で仕事初めに商売繁盛祈願に行くことになったら。
彼氏 or 彼女と旅行先で神社を参拝することになったら。
結婚後、お正月に相手方の両親・親戚と集まって初詣に行くことになったら。
そこで手や口の清め方が適当だったり、お参りのときに変なタイミングで手を叩いていたりすると、かなりの確率でドン引きされます。
もちろん、周りは口に出しては言いません。
ですが心の中で、「こんなことも知らないのね…」「親が教えなかったんだろうな…どんな家庭で育ったんだろう」と非常識のレッテルを貼られています。
職場では「おはようございます」「お疲れ様です」、食事の際は「いただきます」「ごちそうさまです」とちゃんと言うのがマナーであるように、神様の前である神社でも、ちゃんとマナーを守る必要があるのです。
鳥居に入る前から始まっている参拝のお作法
まずは神社の「入口」となる鳥居ですが、何気なく通り抜けてはいませんか?
鳥居は「ここから先は神様がいらっしゃる所ですよ」という印で、家のドアみたいなもの。人の家のドアを勝手に開けて入ってはいけないように、神様の住処となる境内へも黙って入ってはいけません。
まずは鳥居の手前で立ち止まり「これからお邪魔させていただきます」という気持ちで一礼をしてから、くぐるように心がけておきましょう。
鳥居をくぐって、真っ先にお願い事をしに向かうのももちろんNG。
神様の前に立つには、手水舎(ちょうずや、ちょうずしゃ、てみずや等の読み方がある)で身を清める必要があります。
言わずもがな柄杓で水をすくって手と口を洗うあの場所ですが、面倒臭い・寒い・混んでる等といって素通りするのは絶対ダメ。昔は神社を参拝する人々は海や川で水を浴びて全身を清めてから向かったそうで、それくらい神様の前に立つのは神聖なことなのです。
しかし、現代ではいちいち全身に水を浴びてから参拝するというのは不可能なので、この手水舎で手と口を流すことで「清める」行為としているというわけです。
さて、手水舎の意味が分かったところで実際の手順を覚えましょう。
- まずは右手で柄杓を持って水を汲み、左手にかけます。
- 次に、柄杓を左手に持ち替えて、右手にかけます。
- また右手に柄杓を持ち替えて、左手の手の平に溜めるようにしてその水を注ぎます。
- 左手の平に受けた水で口をすすぎます。
- 口を付けた左手にもう一度水をかけて、洗い流します。
- 最後に柄杓を立てて残った水を柄に流して、柄杓に触れた部分も清めます。
このように書くと「覚えるのが難しい!」と感じるかもしれませんが、基本的には
左→右→口→口を付けた手→柄杓
であり、「手や口で触れた部分は全て洗い清める」と思っておけば大丈夫です。
ときどき柄杓に直接口を付けてすすいでいる方がいらっしゃいますが、あれは完全なるマナー違反、そもそも不衛生ですので必ず左手に受けて口をすすいでくださいね。
ごく稀に手水舎のない神社もありますが、だいたいは鳥居をくぐって神殿までの間にあるものです。参道からちょっと離れている場合もありますので、手水舎はちゃんと探すようにしましょう。
拝殿前のお賽銭の基本的な作法
さて、いよいよ神様の前に立つときです。
拝殿の前では、鈴を鳴らす・お賽銭を入れる・手を叩く・礼をするなどとやることが多く、参拝の経験が何度かある方でも「あれ、何からするのが正しいんだっけ?」とふと考えてしまうこともあるのではないでしょうか。
そんな方も、ここで一緒におさらいしましょう。
まずは賽銭箱にお賽銭を入れます。
金額が高ければいいというわけでもありませんが、お賽銭には私欲は捨てる代わりに意志を乗せて届けるという意味があります。無理のない金額で、少額であっても「これが私の目一杯の気持ちです」という思いを込めながら入れましょう。
ちなみに初詣などの混み合った神社では後ろからお賽銭を投げ入れる光景が見られますが、自分が誰かにお金を投げ付けられたら気分が悪いのと同様に、神様やお金に対して失礼となる行為ですので投げ入れるのはやめましょうね。
鈴を鳴らします。
音で穢れを祓って清め神様を呼ぶという意味を持っているのが鈴ですが、実はお賽銭と鈴の順番はどちらが先でも構いません。神社の手水舎や拝殿の近くに、参拝の順番が書かれている場合もありますので、気になる場合は行った神社で確認してみましょう。
次に2回お辞儀をします。(二礼・二拝)鳥居をくぐる前とは違い、腰から45度を曲げる深めのお辞儀をしましょう。
それから右手を少し下にずらした状態で手を合わせ、2回手を叩きましょう。(二拍手)
ここで神様への挨拶やお祈りをします。
お祈りが終わったら手を身体の横に戻し、最後にもう1回お辞儀をします。(一礼・一拝)
この作法の流れが一般に言われる「二礼二拍手一礼(または二拝二拍手一拝)」です。
「その言葉は知っているけれど、お祈りはどのタイミングでするのか分からなくなる」という方は、「神様に挨拶と敬意(2回)のお辞儀をして、手を叩いて神様を呼んで聞いてもらいたいことを伝える。伝え終わったら、ありがとうございましたのお辞儀(1回)」といった流れで覚えておけば良いでしょう。
また、お祈りの際は自分が何者かを神様に知ってもらうために、「◯◯県◯◯市◯◯町◯番地から参りました、◯◯◯◯と申します。」と最初に住所と名前を伝えるのがベターです。
「神様なんだからそれくらい分かるでしょ!」という傲慢な考えは捨てましょう。
神様だって自ら名乗らない人は不審なのです。
お祈りが終わったら、あとはお守りを買ったりおみくじを引いたり、境内を散策したり座ってのんびりしたり自由に過ごしてOK。
あっ、でも帰る際も鳥居をくぐったあとは振り向いてまた「お邪魔しました」の一礼をしてくださいね。
ここまでできたら神社のお作法は完璧です。
神様との接し方を理解しよう
ただ行動の順番を事務的に覚えるよりは、それぞれに意味や由来があることを理解して覚えると一つ一つの動作が大切に感じて来ませんか?
さらに言うと、神様の前に出るときは目上の方と接するときの態度だと心得ておけば良いのです。ビジネスで取引先の社長に会う際に不潔な装いで伺うことはないし、結婚相手の親御さんに挨拶するときは失礼のない態度や言葉遣いをする。
そんな礼儀作法が身に付いていれば、神前だからと言って特別に身構えなくても大丈夫なのです。
もちろん、作法を知っていたけれど初めて来る場所で勝手が分からず間違えてしまった、急に忘れてしまったという場合は気にしなくても構いません。
「知ってて間違える」のと「知らなくてやっていない」のでは大違い。
うっかり間違えてしまった人は咎められませんが、「知らない」まま無礼な行ないをしている人は、ちゃんと神様も区別しています。
神様は実は我々が思っているより遥かに人間的、であるのです。
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