一部例外の神社もありますが、普段みなさまがお参りをしている場所は神社の中でも「拝殿」と呼ばれるところです。
読んで字の如く、「参拝する殿(建物)」の役割です。
その奥にある「本殿」が実際に神様をお祀りしている場所、いわば「神様の住処」。
とても神聖な場所である為、特別な場合や一部の神職の方を除いては立ち入りが禁じられています。
なので、本殿を見せることはできないけれど、人々が神様に意識を向けてお参りができるようにと作られた場所が本殿より手前にある「拝殿」となるのです。
しかし、祭事や特別企画などの時期を除いて、その本殿にいつでも参拝できるのが上賀茂神社(賀茂別雷神社)の「特別参拝」。
500円で本殿への参拝のほか、神職によるお祓い・重要文化財の見学や神社建築の仕組みを知ることができる、盛りだくさんの参拝コースです。
上賀茂神社の特別参拝はどう特別なの?
上賀茂神社の特別参拝は、朱印受付・お札・お守授与所で受付を行なっています。(平日のみ。土日祝は拝殿の左側が受付になります)
受付で料金を支払ったら「浄掛(きよかけ)」と呼ばれる、清浄を示すための紙を受け取り、首にかけて指示された部屋で待機します。
実はその部屋自体も重要文化財に指定されており、中では上賀茂神社の御祭神である「賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)」の母である玉依日売(たまよりひめ)の物語が描かれた絵が飾られており、鑑賞しながら待つことができます。
神職の方が来られたら、上賀茂神社の由緒について説明を受けた後、神様の前に出るため不浄を落とすお祓いを受けます。
お祓いを受けたら「内庭」と称される中門より内側(拝殿の向こう側)に案内してくださいます。ここで拝殿と「権殿(ごんでん・何らかの事情で一時的に御神体を移動させておく場所)」を前にしながら、上賀茂神社の建築上の仕組みや拝殿と権殿の役割、拝殿・権殿前に鎮座している狛犬と獅子などについてのお話を聞かせていただけます。
ここでのお話は季節によって変化があるそうで、今の時期は前回の式年遷宮事業として宮大工の方々が行なっている、檜皮葺(ひわだぶき)屋根の葺替修繕工事について聞くことができます。
ちなみにこの修繕には約10億円の資金がかかるそう…。
新しい屋根に利用される檜皮葺は、お一人2000円で名前と住所を書き奉納することができ(これまで使用されていた檜皮葺で作られたお守りを授与していただけます)、国からの補助金も受けられるそうですが、それも一部であり実際は半分以下の額。
残り半分以上となる億単位のお金を、あとは神社だけで集めなければならないとのことでした。
その後は、いよいよ国宝となっている「本殿」前に進んで参拝をします。
実は上賀茂神社の拝殿の正面は、ちょうど権殿と本殿の間となっていて拝殿からは本殿がほぼ見えない作りになっています。
ほかの参拝者の方がお参りをしている拝殿を背にしながら本殿に手を合わせるのは、ちょっと不思議な感覚もありながらも本当に神聖な行為であると身で感じることができます。
本殿を参拝し終えたら内庭を出て「高倉殿」と呼ばれる、いわゆる宝物館へ。
上賀茂神社に伝わる御神宝である、武将たちによる古文書や著名人たちが奉納した檜皮葺の拝観、本殿・権殿の左右で神様を守る役割をしている獅子と狛犬のより詳細な由来などを知ることができます。
宝物館がある神社は各地にも存在しており、そのほとんどが入場料を支払って入館するかたちですが、上賀茂神社では特別参拝を申し込まれた方のみ入館可能、それ以外の時間は施錠されており、文字通り「特別感」が満載。
実際に行ってみて感じたのですが、500円では申し訳ないほどにまさに至れり尽くせりの参拝です。
上賀茂神社は何回行っても楽しめる!
この上賀茂神社の特別参拝は、時期によって高倉殿で展示されている御神宝の入れ替えがあるほか神職の方がご案内してくださる内容も変化するそうで、季節次第では二の鳥居をくぐってすぐに見える立砂についての解説も受けられたり、檜皮屋根の葺替工事の作業現場も間近で見ることができるとのこと。何度行っても楽しめて、より多くのことが学べます。
ちなみに今の時期だと初詣で人出のピークも落ち着いたからか特別参拝も混み合っておらず、貸切のような状態でゆったりとお話を聞いたり拝観をすることができます。
(と言うか、拝殿の参拝には行列ができているけれど多くの方が特別参拝を気に留めていない様子だったので、「特別参拝って書いてあるけれど何かよくわからないからいいや」といった感じでスルーしている人が大半だった印象)
境内全域が世界遺産でありながら(奥の神山まですべてが世界遺産認定!)、本殿・権殿は国宝、摂末社のほとんどは重要文化財という、日本が誇るべき価値が集結した場所ともいえる上賀茂神社。
せっかくお参りするなら、その由緒や価値に触れずに帰ってしまうのは実にもったいないこと。
立てた誓いを叶えるためにも、より神様のことを知って距離を縮めてみませんか?
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