不倫騒動が芸能界を賑わす昨今、日本人は性について、いつからこんなに奔放になってしまったんだ!と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は色恋沙汰は今も昔も変わらず、日本では太古の昔から男との女の間のいざこざは絶えなかったのです。
今日はそんな日本古来の男女間の風習の中から「古女戴き」をご紹介します。
妻を他の男に渡す古女戴き
古女戴き(読みは「ふるめいただき」、古女頂きとも書く)とは、簡単に言うと、夫が自分の奥さんを他の男に渡すこと(厳密には「いただく」ので貰い手側が受け取ること)を指します。
愛する妻を他の男に渡してしまうとはどういうことだ!
なんという倒錯した男女関係なんだ!破廉恥だ!
と取り乱してしまう人もいるかもしれませんが、実は、平安時代や鎌倉時代では、この古女戴きが出世に大きく関わることだったのです。
古女戴き、それは信頼の証
古女戴きは一般大衆の間で行われていたことではなく、貴族や天皇家の人たちの間で行われていました。
正妻や側室という言葉があるように、位の高い人は奥さんが1人ではなく複数いました。いわゆる一夫多妻制というやつです。
そのような奥さんがたくさんいる身分の高い夫が、信用する部下に、古女(ふるめ)(古妻とも書きます)を下げ渡すことがあり、このことを「古女戴き」と呼んでいました。
古女とは文字通り、新しくはない奥さんのことで、昔からいる奥さん、悪い言い方をすると今一番ぞっこんではなく、飽きてしまった奥さんのことです。しかし、いくら古いとはいえ、自分の奥さんを別の男に渡してしまうのですから、よっぽど信頼している臣下にしか古女を渡すことはありませんでした。
古女を戴くことが、その後の出世にも大きく影響しました。
実際、名門氏族である藤原氏は、天皇家から古女戴きをし、力をつけていったと言えます。
なんで古女戴きなんてするの?
しかし、いくら信頼しているとはいえ、自分の奥さんを部下にプレゼントするなんて、現代社会を生きる私たちには理解できません。
なぜ、位の高い人が古女戴きをしたかというと、これには養子制度が関わっています。
奥さんがたくさんいて、それぞれの奥さんに子どもが生まれると、夫は全ての子どもに目をかけてやることができなくなります。
そこで、信用する部下に、自分に代わってお父さん役を担ってもらい、子どもの面倒を見てもらおうと養子に出すということがありました。
このとき、子どもだけでなく、子どもの実の母親も一緒に渡して、実の母と信頼する部下である父の間で子どもを育ててもらおうとするのが、古女戴きと言えます。
また、古女戴きを行う際は、奥さんが妊娠した状態で渡すということがほとんどでした。妊娠した奥さんのめんどうも信頼する部下に見てもらおうということです。また、そこには部下と奥さんの間で子どもができないようにするという意味もありました。
ただし、ものすごく信頼している家臣には、養子の意味合いなく、妊娠もしていない奥さんをプレゼントすることもあったそうです。
今の夫婦制度では理解できないようなことであっても、文化や社会制度を考えると、当時は理にかなった行動であった、というものがたくさんあります。
みなさんも昔の風習や、海外の文化を今の私たちと違うものと切り捨てるのではなく、その成り立ちや文化的な背景を学び、多様なものの見方がデキるようになりましょう!
コメント