どうやっても不可能なことをよく物理的に不可能と言いますよね。
でもその代わりに、数学的に不可能だとか、化学的に不可能、生物学的に不可能とはあまり言いませんよね。
一体なぜ、これらの言葉よりも、物理的に不可能がよく使われるのでしょうか?
数学的に不可能な方が強烈!?
人によって色々な意見があるとは思いますが、一般的に、
数学 → 物理学 → 化学 → 生物学
の順に基礎的な学問から応用的な学問に並んでいると言えます。
ここでいう「基礎的」という言葉は「厳密性」と言い換えてもいいかもしれません。
そんなわけですから、絶対に不可能、という意味を表すのであれば、物理的に不可能、という言葉よりも数学的に不可能、と言った方が、その不可能っぷりが強調されるはずです。
しかし、実際には数学的に不可能という言葉を普段の生活で耳にすることはありません。
何故でしょうか?
その理由は「モデル化」にあります。
物理的に不可能が一般的な理由はモデル化にあり
モデル化とは自然科学の世界でよく使われる手法です。
複雑怪奇な自然現象を、簡単な図などを使って、「こういう仕組みになっている」という仮説を作ります。
これがモデル化です。
実験結果がモデルと一致しない場合は、モデルを捨て去るか、修正する必要があります。
モデルの修正を行い、実験繰り返し、このモデルの通りに自然現象が起こる実験結果を得られれば、このモデルは科学的に正しかったことになります。
さて、モデル化の話を適用させれば、「物理的に不可能」と言う言葉は「物理学上で正しいことが認められたモデルを適用させても起こりえない」と読み替えることができます。
確かにこう言われると絶対に起こりえない感じがしますね。
一方で、数学は自然科学ではありません。
自然現象を数学で説明できることはありますが、数学そのものは自然現象を対象にしたものではないのです。
自然科学ではありませんが、数学でもモデル化はよく使われる手法です。ただし、数学的なモデルを適応させる対象は数学の現象そのものか、または、自然現象をかなり抽象化したものです。
私たちは普段、抽象化された世界で生活しているわけではありません。
そのため、あまりに抽象的な数学的なモデルを適応させて、「数学的に不可能」なんて言われても、抽象的すぎてピンときません。「確かに抽象的に考えたら不可能かもしれないけど、もっと具体的に考えたら可能かもしれない…」と別のモデルを適応させられる余地まで感じてしまいます。
なので、モデルとしては抽象度を少し下げた「物理的に不可能」が一番ピンと来るもので、広く一般的に用いられているのです。
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