ドイツには「財政の魔術師」という異名を持つヒャルマル・シャハトという人物がいます。
彼はドイツのハイパーインフレを収束させたり、ナチス政権下の経済政策を支え、40%あった失業率をほぼ完全雇用水準にした力のある人物です。
日本で言えば、世界最速で世界恐慌によるデフレから日本を回復させた高橋是清にあたるでしょうか。
今回は日本ではあまり知られていないシャハトという人物を「レンテンマルクの奇跡」という事例を通して紹介したいと思います。
異次元のドイツのハイパーインフレ
1923年にドイツマルクの対ドルの為替レートは約2500万分の1に下落します。
ハイパーインフレが起こるのです。
ハイパーインフレーションとはフィリップ・ケーガンの定義で「インフレ率が毎月50%を超えること」と定義されています。毎月のインフレ率50%が継続すると、一年後には物価が130倍に上昇することになります。
では、ドイツのハイパーインフレで1年間に何倍物価が上昇したのかというと、なんと一兆倍でした。桁が違いすぎます。
このようなインフレが起こった理由としては以下が挙げられます。
- ドイツが第一次世界大戦の責任をとって、ヴェルサイユ条約で植民地を全て失い、GNPの約2.5倍に相当する賠償金を課せらた
- 上記の賠償金の支払いが滞ったため、フランスとベルギーがドイツの主要工業地帯であったルール地方を占領した
ルール地方の占領に反発したドイツでは労働者のストライキが起こります。ストに参加した労働者の給与を政府が保証することになったため、ドイツ経済は政府支出(需要)が激増、生産(供給)は激減することになりました。その結果がハイパーインフレです。
そして、この異次元のインフレを収束させた人物がヒャルマル・シャハトなのです。
「レンテンマルクの奇跡」とは
彼は、通貨「レンテンマルク」の発行を主導し、旧来の1兆マルクを1レンテンマルクと交換させました。このような通貨の桁数を減少させることを「デノミネーション」と呼びます。
レンテンマルクの特徴は、金や銀の代わりにドイツの土地をその価値の裏付けにしたことです。自国の土地の価格と連動する通貨を発行したのです。
土地を担保にすることで、通貨に対する信用を取り戻すことができ、また同時に公務員の削減等、財政再建にも取り組んだドイツ政府は信頼を取り戻し、インフレは劇的に沈静化しました。これが「レンテンマルクの奇跡」と呼ばれる所以です。
このレンテンマルクの奇跡を主導した人物がヒャルマル・シャハトなのです。
いかがだったでしょうか?シャハトはレンテンマルク以外にもナチス政権下の経済政策を支えた人物です。
日本の財政問題もヒャルマル・シャハトなら解決できるのでしょうか?
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