国際収支の天井という概念を紹介します。
国際収支の天井とは?
戦後の貿易再開から60年代にかけて、当時の日本では、国内の好景気が続くと、輸入が増え、外貨準備が底をついてしまうために、経済を引き締めて景気を後退させるという政策が行われていた。これを当時「国際収支の天井」と呼んでいたのです。
外貨準備が底をつくって今の日本の経済状況ではあまり想像できませんよね。
そもそも外貨準備とは、政府や日銀が、為替レートの安定や公的な外国への支払いのために保有している外貨のこと指しますが、日本の外貨準備高は2010年では中国について世界2位の位置にあります。金額で言うと、1兆427億ドル、日本円に直すなら100兆円以上の外貨準備があるわけです。
しかし、日本は外貨準備不足による国際収支の天井にしばしば陥っていたというのはいったいどういうことなんでしょう?
このことを理解するには、当時の経済状況を詳しく理解する必要があります。
国際収支の天井に陥るメカニズム
当時の日本は、ブレトンウッズ体制に基づく、1ドル=360円の固定相場でした。そして、日本政府にはこの数値の上下1%以内で固定相場を維持する義務がありました。
この状態で好景気になると、輸入元がアメリカ企業だと、日本の輸入業者は支払いのためにドルががどんどん必要になり、ドル需要が高くなります。
日本は原材料を輸入して、加工して製品化する経済モデルなので、好景気になると原材料の輸入が増えるわけです。これを放っておけばドル高円安になりますが、固定相場制のもと、1ドル=363.6円 (360×1.01) 以上の円安は許容できないので、この値でドルを無制限に供給しなければなりません。
しかし、外貨準備としてのドルには限りがあり、無制限に供給することは理論上不可能です。そのため、好景気にあるにもかかわらず、ドル需要を下げる金融政策を取らざるを得なかったのです。
この当時の日本の経済をまとめると、次のようなサイクルになっていました。
好景気→経常収支赤字化(外貨準備不足)→金融引き締め→経済成長率低下
好景気になると、経常収支赤字(外貨準備不足)になり、それが経済成長率にマイナスの影響を与え、成長に限界が生じる。
このサイクルが国際収支の天井と呼ばれたのです。
いかがだったでしょうか?経済の基礎知識を身につけて経済ニュースを理解できるようになりましょう!
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