2016年の大ヒット映画『君の名は。』に涙した方も多いかもしれません。
この記事では、『君の名は。』をみた方向けに、ストーリーのプロットに注目して、ヒットストーリーの奥深さに触れます。映画に感動した方も、そうでもなかった方もお楽しみください。映画をみていない方は、ネタバレもありますので、できれば映画をみたあとでチェックしてくださいね。
さて、映画はある朝、東京に暮らす主人公の男の子(瀧)が目を覚ますと、田舎に住むもう一人の主人公の女の子(三葉)と体が入れ替わっているシーンからはじまります。同様に三葉は東京の瀧の体に移っていて、入れ替わり体験の衝撃を味わうことになります。こんなシーンからはじまる不思議お話、ロードムービー的な冒険、タイムスリップのストーリー、少年少女の成長と恋愛など素敵な展開がみる者を引き込みます。
男女入れ替わりストーリーのブームは、こんなところにも!?
…これは、多くの方におなじみの進研ゼミのDMマンガですね。よく見ると男女入れ替わりの衝撃のシーンです。『君の名は。』のブームは早くもゼミマンガにも波及しているのでしょうか?
実はこのマンガは、筆者が前職ベネッセでDMプランナーをしていた頃に企画したものです。2000年、今から15年以上前のゼミマンガ。では、「君の名は。」の男女入れ替わりのストーリーは、新海誠氏が筆者のゼミマンガを見て、真似たものなのでしょうか?(そんなわけない)
私はこのシナリオを書くにあたって、何かを具体的に参考にしたわけではなくて、”どこかで見た”話にインスピレーションを受けて考えました。普通のゼミマンガより遊びのある夏休みのマンガで、男女の入れ替わりにより、”ゼミをやっている⇆やっていない”のチェンジ体験もでき教材の訴求もしやすいというアイディアでした。
男女入れ替わりストーリーの名作「おれがあいつであいつがおれで」
2000年のゼミマンガを企画したあとで知ったのですが、男女の入れ替わりは、名作児童文学とその映画化で有名な作品がありました。”どこかでみた”話と感じたのは、この映画の記憶が残っていたのでしょう。ご紹介します。
その名も「おれがあいつであいつがおれで」( 作/山中恒)
1982年に旺文社から刊行された児童文学の古典、男女入れ替わり物語の名作です。名監督、大林宣彦氏により同年に『転校生』として映画化され、児童文学もさることながらこの映画で、男女入れ替わりの衝撃のストーリーが印象づけられました。『転校生』は、大林監督自身により2007年にもリメイクされています。名監督にとっても思い入れのある作品なのです。
他にもある『君の名は。』に見られる古典的ストーリー展開
タイムスリップ的なお話
映画の途中で、主人公の男女入れ替わりは、3年の時間も隔て飛んでいることが判明します。このタイムスリップは、男女入れ替わりよりさらに古典的な展開です。類似で、時間を意図的に跳躍できるタイムリープやタイムトラベルも含めると有名な小説や映画には事欠きません。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の三部作、小説(映画も有名)では、『時をかける少女』あたりが印象的ですよね。
ロードムービー的なお話し
物語の中盤で、東京の主人公がバイトの友人と先輩を連れて、入れ替わり体験の地に向かって旅をします。青春期の少年少女が旅をして成長するストーリーも印象的な作品が多いですね。代表格は『スタンド・バイ・ミー』でしょうか。スティーブン・キングの短編、故リヴァー・フェニックスの演技も注目を集めた、ロードムービーです。ひと夏の冒険(『君の名は。』では季節は夏の終わり?)の瑞々しさ、切なさは、通じるものがあります。
神隠し的なお話し
『君の名は。』では、「たそがれどき(黄昏時)」は「誰そ彼」という意味合いもあると、国語の授業シーンが序盤に挿入され、印象的でした。「たそがれどき」という言葉は、民俗学の本ではよく、神隠しの時間や人が境界を越えて異界に行ってしまう民話に関連して扱われます。
『君の名は。』では、三葉が田舎の街の境界の地に、神社の行事で自身の口を使って作った「口噛み酒」を奉納しています。物語の後半ではこの場所で、たそがれどきに「口噛み酒」を触媒にして、瀧と三葉がこの世とあの世(?)の境界で出会います。
街ごと消えてしまった舞台、境界のシーンは、神隠し的なストーリーも彷彿とさせるものです。神隠し、異界と境界、たそがれどきについては、小松和彦の「神隠し―異界からのいざない (叢書 死の文化)」で、わかりやすく論じられています。
また、『千と千尋の神隠し』は、タイトルそのもの神隠しを壮大なアニメーション映画に仕立て上げたお話しですね。
その他のストーリーの特徴
『君の名は。』は、他にも、恋愛物語としての特徴や、災害や大惨事に立ち向かう、パニック映画の特徴も見みられます。
『君の名は。』の魅力は?
これだけの定番ストーリーを次々展開しながら、まったく新しい映画のように感じてしまうところが、アニメーションや主題歌のパワーも合わせて新鮮であり、映画『君の名は。』の魅力なのかもしれませんね。
かく言う筆者は、『君の名は。』を劇場でみたときには没入できず、世間での大ヒットほどの感動を味わっていないのです。まっさらな気持ちでもう一度、あの映画をみてみたいと思っています。
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