著作権法47条の7がある日本は機械学習やりたい放題のパラダイス国家かも!?

2017年10月22日にSTORIA法律事務所、柿沼太一弁護士による「AIビジネス法務・知財セミナー」に参加してきました。
不勉強な学生だったとはいえ、筆者も法学部出身。リーガルマインドのかけらは持っているだろうと思いながら、特許や商標の出願も経験し、創作物を扱う仕事で著作権の課題にも積極的に取り組んできたものです。
一般的に法律は、「おかたくそこにあるもの」という印象がありますが、新しい課題に対しては解釈によって新しい光があたることもしばしばあります。
例えば、ビットコイン領域の改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)やシェアリングエコノミー領域の住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)、そして今回のセミナーのテーマ、AI領域の法律課題など、新しいビジネスに呼応する法律の枠組みを見ることは、リーガルマインドを持ったビジネスマンにとって高度な知的活動になります。
さて前置きはここまで。
今回の柿沼弁護士のセミナーは、骨太で中身が濃く、セミナーは4時間、資料は約200スライド、関係法令や契約書雛形や設問の添付資料20ページのボリューム満点の内容でした。
AIビジネス法務・知財セミナーで使用された参考資料の写真

  1. AIの基礎
  2. AIと法律・知財に関する問題領域の概観
  3. AIの生成に関する法律問題
  4. AIの保護に関する法律問題
  5. AIの活用〜AIが自動生成したものを法的に保護するにはどうしたらよいか〜
  6. AI活用による法的責任について

上記が本セミナーの目次ですが、全内容をかいつまんで紹介…というのも本当に表面的になってしまうので、興味深かった数多くのテーマから1つだけピックアップしてご紹介します。

著作権法47条の7がある日本は機械学習のパラダイス?

日本の著作権法の47条の7を見てみましょう。

(情報解析のための複製等)
第四十七条の七  著作物は、電子計算機による情報解析(略)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(略)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

コンピュータで情報解析を行う目的であれば生データやデータベースを活用するのはOKと読み取れます。
47条の7の解釈から、一定の条件において、第三者が著作権を有している生データやデータベースから学習済みモデルを生成し、商用利用もできる、というのです。
セミナーでは、これはなんらグレーな法解釈ではなく、学者さんも日本ならではこの法環境をもっと積極的に海外にアピールすべき、という方もいるという話でした。
この47条の7の解釈の例えでは、手塚治虫のマンガ本を全巻適法に(普通に)購入して、すべて機械学習にかけて、手塚治虫ワールドの学習モデルを商用に利用できるという話題もありました。

マンガのデータから学習モデルを生成していいの?

マンガのデータを使って、学習モデルを作ってしまうのは、法的にはOKとのこと。
契約で明示的に許諾がされていない場合は、そもそも利用できないのですが、コミックの奥書から「制約はない」と解釈できるのです。

しかし、Amazon Kindleからの利用の場合には、日本の法律の他に、Amazonが課す利用規約があり、同意をクリックする必要もあるため、この限りではないということです。
さらにAmazonの場合は、利用行為地の問題で、ネットビジネスの場合サーバーの所在地において利用行為地であるとする、という考え方があるため、この点からも制約があると考えられるそうです。
この著作権法47条の7の要件の前に、検討過程としては「対象データ・対象DB」が著作物であるかどうか、「「複製」「翻案」行為に該当するか」といったステップがあることも丁寧にセミナーでは、解説されていました。
いずれにしてもせっかくですので日本には、「47条の7」がある!ということを強みにしてAIの学習モデルがどんどん発展していくといいですよね!


「AIビジネス法務・知財セミナー」は、これにとどまらず、これからのAIを利用した発明やイノベーション、ビジネスへの応用に役立つ貴重な情報が豊富でかつ表面的な知識でなく、法律の背景、議論の観点などもわかるものでした。
大阪と東京で開催された本セミナーは終了してしまいましたが、これからの柿沼先生、STORIA法律事務所のセミナー、発信には注目です!
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